Fate/staynight、とらいあんぐるハートクロス二次創作

理想の意味、剣の意志

三日目 第一部

契約 〜contract〜


 行為の余韻に浸りながら、俺は心地良い倦怠感に包まれていた。

 隣にいる女性に腕を絡ませて抱き寄せ、艶やかな紫の髪を梳く。

「んっ……」

 耳朶をくすぐる甘い声。

 そこにはつい先程まで消えそうだった面影はもう無い。

 女性は今、確かな存在感を持って俺の腕の中にいた。

 どういう原理かは分からないが、助かったのは確からしい。

 時間が無かったとはいえ安直な決断ではなかったかと少し後悔もしたが、女性の穏やかな表情を見ていると、これでよかったんじゃないかとも思う。

 そんなことをぼやけた頭で考えていると、なんの前触れもなく左の手の甲に鋭い痛みが走った。

「――――――痛っ!」

 不意打ちじみた痛みに思わず声を漏らした俺に、女性が尋ねる。

「どうしたの?」
「急に左手に痛みが走って……」

 左手に視線を落とせば、そこに浮かび上がるは奇妙な血色の刻印。

「…………なんだよ、これ?」

 俺の視線を追って刻印を瞳に映した女性は、在り得ないモノを見たかのように大きく眼を見開き硬直する。

 しばらく呆然としていた彼女だったが、我に返った途端に強張った顔で俺に詰め寄ってきた。

「もっとはっきりと左手を見せてもらってもいいかしら?」
「あ、ああ……」

 有無を言わせぬ強制力を伴った殺気混じりの冷たい声に、俺は言われるまま、彼女が見やすいように左手を差し出す。

 痛いほどの力で俺の手首を握り、食い入るように刻印を凝視していた彼女は、やがて大きく溜息を吐きながら、どこか諦めたように呟いた。

「…………はぁ、助かったと思ったらまた厄介なことに……。
 まさか坊やが魔術師だったなんてね」
「なっ……!」

 女性の口から発せられた魔術師という単語に思わず驚きの声を上げる。

 魔術師など、一般人にとっては空想上の産物以外の何者でもない。

 しかし俺はそう呼ばれる人間が現実に存在することを知っていた。

 なぜなら、俺自身が魔術師なのだから。

 だとすれば魔術師の存在を知る女性もまた、魔術師だというのか。

「アンタも……魔術師、なのか?」
「ええ。……もしかして今頃気付いたのかしら?」

 女性の呆れたような視線が痛いほどに突き刺さる。

「しょうがないだろ、まだ半人前なんだから」
「成る程、どうりで……」
「なんだよ?」
「私が坊やを魔術師だと見抜けなかった理由よ。これで納得できたわ。
 半人前を自称するだけあって魔力量が一般人と大差ないほど微少なんですもの。
 これじゃ気付けなくても仕方ないわね」
「むっ、悪かったな少なくて」
「ふふ、そんなに拗ねないでよ」
「拗ね……ってそんなわけあるかっ」

 そんな俺の反応が面白かったのか、彼女はくすくすと意地悪そうに笑う。

「ねえ、一つ聞かせて。坊やはどうして私を助けたの?」

 笑った表情はそのままに、ただ眼だけが真剣だった。

 適当に取り繕った言葉ではとても納得しそうにない。

「だってアンタ、今にも死にそうだったじゃないか。
 苦しんでる人を助けるのに理由なんていらないだろ」
「たとえそれが血塗れだったとしても?
 私を魔術師だと見抜けないほどの半人前なら、見なかったことにして逃げるのが普通の反応だと思うのだけど?」

 彼女の表情からは既に笑いは消えていた。

 真剣な表情で俺の言葉を待っている。

「確かにそうかもしれない。
 それでも、自分の手で助けられる人を見捨てるなんて俺には出来なかったんだ」
「何故?」
「どうしようもなくガキっぽい理由なんだけどな。
 俺はさ、正義の味方ってやつになりたいんだ。
 誰かを犠牲にしたりしない、全てを救える正義の味方に」
「……ふ、ふふ、あははははは!!
 全てを救う正義の味方って、坊や……」
「くそっ、そこまで笑うこと無いだろ」

 自分がいかに恥ずかしいことを言ったのかくらいは自覚しているつもりだ。

 おそらく俺の顔は真っ赤だろう。

「ごめんなさいね、あまりに予想外の答えだったから。
 ふふ、本当にそれは魔術師らしからぬ答え」

 まだ笑いが収まらないのかピクピクと頬が震えている。

「――――楽しそうだね」
「ひゃっ!?」

 不意に後ろから掛けられた声に、女性は可愛い悲鳴をあげて慌てて振り返る。

 彼女の背後には、いつの間に入ってきたのか気配を消した美由ねえが立っていた。

「貴女ね……」
「あはは、驚いた?」
「そりゃあ後ろから急に声をかけられたら誰だって驚くわよ。
 いつからそこにいたのか聞かせてくれるかしら?」
「その前に服を乾かしたから先に着て。……士郎も」
「あら、気が利くじゃない」

 慌ててズボンを上げた俺とは対照的に、女性は恥ずかしがる様子も無く、緩慢な動作で服を身につけていく。

 紫のローブに付着していた血液は、おそらく洗っても消えることは無いだろう。

「いつからいたのか、ね。
 ん〜、大体貴女が士郎の手を掴んでたあたりからかな。
 小さいとはいえ殺気を感じたから何事かと思って様子を窺ってたんだけど……。
 何があったのか説明してくれるんだよね?」
「ええ。貴女達には知る権利があるし、知らなければならない義務もある。
 けれどその前に一つ確認させてちょうだい。貴女も魔術師なのよね?」
「えっ?魔術なんてこれっぽっちも使えないよ、私」

 確信の篭った女性の質問に美由ねえは否と返す。

 半信半疑といった様子の女性は俺に向き直ると、確認するように尋ねてきた。

「本当に?」
「ああ。美由ねえとは八年くらい一緒に暮らしてるけど、魔術を使ってるところなんて一度も見たことが無い」
「なら貴女はどうして魔術の存在を受け入れているの?
 まず相手の正気を疑うのが普通の反応だと思うのだけど?」
「かもね、でも私は士郎が魔術を使っているのを見たことがあるから」
「そう…………まあいいわ」

 女性はその答えに少し考え込んでから、やがて本題を切り出した。

「貴女達は聖杯戦争というものを御存知かしら?」
「聖杯戦争?」
「その反応だとやっぱり知らないようね。
 聖杯戦争、それは七人の魔術師と七騎のサーヴァントによる争い。
 冬木という町を戦場に、言葉通り聖杯という名の万能の願望器を奪い合う殺し合いバトルロワイヤル
「サーヴァントってのはなんなんだ?」
「聖杯の力で現世に呼び出された英霊、それがサーヴァント。
 そしてサーヴァントと契約した魔術師はマスターと呼ばれ、聖杯戦争の正式な参加者として認められるわ」
「ちょっと待て、英霊ってまさか……」
「あら、英霊については知っているのね」

 英霊、それは英雄が死して昇華した上位存在。 

 その程度の知識しか知らない俺でも、人間よりも高位に位置する彼らを呼び出し使役するなど、正気の沙汰とは到底思えないし、可能だとも思わない。

「そんなの、どう考えたって魔術師の領域を越えている」
「だからこそこの町の聖杯が本物と認められているのでしょう。
 とはいっても、流石の聖杯にも七体の英霊をそのまま召喚するまでの力は無いわ。
 だから聖杯はクラスという名の器を作り、その役に適した英霊の魂をそこに押し込めることで不可能を可能にしたのよ。
 聖杯に用意されたクラスは全部で七つ。
 剣騎士、セイバー。
 槍兵、ランサー。
 弓兵、アーチャー。
 騎乗兵、ライダー。
 暗殺者、アサシン。
 魔術師、キャスター。
 そして狂戦士、バーサーカー。
 その中で私はキャスターのサーヴァントとして呼び出された」
「…………は?」

 言われた内容が理解出来ず間抜けな声を上げてしまう。

 そして徐々にその意味を理解するにつれ、顔から血の気が引いていった。

「待て待て待て、だったらアンタは英霊ってことだよな。
 だったらアンタを呼び出した魔術師がいるわけで……」

 そこまで言って、女性―――キャスターの変色したローブが眼に映る。

「……まさか、殺された?」

 俺の言葉を聞いた女性は、底の読めない不気味な笑みを浮かべる。

 ぞくりと背筋が冷える、そんな微笑。

「いいえ。既に死んでいるのは正しいけれど誰かに殺されたわけじゃないわ。
 手を下したのは私自身。私がこの手であの男を殺したのよ」

 キャスターは吐き捨てるように言い、自らの手を見下ろした。

「それは、どうして?」

 話が始まってから今まで、沈黙を保っていた美由ねえは静かに問う。

「私を召喚した男はね、敵同士が潰しあうのを影で待っているような、そんな臆病な三流魔術師。
 そのくせ自尊心だけは人並み以上で、魔術師として能力の勝る私に嫉妬し、妬み、罵倒して、私を信用しようとはしなかった。
 魔術師の武器は魔力、なのにくだらないプライドをいつまでも抱き続けて私の魔力量を常に自分以下に設定していたのよ。
 人間程度の魔力で、キャスターたる私が満足に戦えるはずも無い。
 男に見切りをつけるのに、数日と掛からなかったわ」
「それだけの理由で殺したの?」
「忘れたのかしら?これは互いが互いを殺し合う戦争。
 どうせ放っておいても他の参加者に殺されるだけ、その時期が少しばかり早くなっただけのことよ」
「だからって、なにも殺すことはないじゃない。そのまま隠れてやり過ごすとか……」
「殺すことは無い、ですって?綺麗事を。
 あんな愚かな男に従うしか無かった屈辱が貴女達に分かる?
 貴女にとってはそれだけのことでも、私には許容できなかった」

 そう言うキャスターの顔は酷く悲しげで、どこか諦めのような雰囲気が滲んでいた。

 人殺しに共感なんて出来ない、それは彼女の背負った罪だ。

 だけどキャスターのその表情を見ていると、どうしても俺は彼女が悪人だと断じることは出来なかった。

「驚くほど容易に事は進んだわ。
 唯一計算違いがあるとすれば、マスターとの繋がりの強さを甘くみていたこと。
 マスターを失っても一日くらいは大丈夫だと考えていたけど、あの男から供給されてた魔力だけでは数時間で限界が訪れたわ。
 それから後の事は貴女達の知っているとおりよ」
「倒れているキャスターを見つけて、寺に運び込んだ」
「運ばれたのがこの場所だったのが幸運ね。
 サーヴァントを存続させるのにこれほど適した場所はそうないもの」
「じゃあ俺がアンタを抱いたのは……」
「パスを繋いで依り代にするためよ。
 現世との繋がりさえあれば現界することくらいは叶うから」

 罪悪感の欠片も無く言い切ったキャスターに怒りを露にしたのは美由ねえだった。

「貴女は自分が生き残るために士郎を巻き込んだの?」
「そうなるわね。だけど私ばかり責められるのは心外よ。
 坊やの手に令呪が現れたということは、彼には元から参加資格があったということですもの。
 私と契約しなくても遅かれ早かれ、何らかの形で巻き込まれていたでしょうね」
「令呪って、もしかしてこれのことか?」

 美由ねえに見えるように左手の刻印を翳す。

「ええ、それが令呪。サーヴァントに対する三回限りの絶対命令権。聖杯に選ばれた資格有る魔術師だけに宿るマスターの証。
 坊やにだって、叶えたい望みくらいあるでしょう?
 その望みを叶える資格を手に入れたのだから、むしろ参加できることを喜ぶべきことじゃないかしら」

 叶えたい望み。

 そんなモノ、初めからたった一つしかない。

 だけどそれは…………。

「叶えたい望みなんて……いや、聖杯なんてモノに頼ってまで叶えるほどの願いなんて、俺には無い」
「……嘘、でしょう」

 信じられないといった顔でキャスターは俺を覗き込む。

「人間であれば大小の差こそあれ何らかの願望を抱いているものよ。
 それが無いなんて……有り得ないわ」
「勘違いしないでくれ、俺にだって叶えたい望みくらいはあるさ。
 けど、俺の願いは聖杯に縋ったら意味の無い。
 自力で果たしてこそ価値のある願いなんだ」
「その坊やの抱く願いというのは何かしら?」
「さっき話しただろ、俺は正義の味方になりたいんだって」

 目を瞬かせ、次の瞬間キャスターは微笑とも苦笑ともとれる淡く曖昧な笑みを浮かべて、小さく呟いた。

「本気だったのね、それほどまでに」
「ああ、本気以外であんな恥ずかしいこと言えるか」
「じゃあ坊やは参加しないつもり?」
「答える前に聞きたいことがある。
 聖杯戦争に一般人が巻き込まれることはあるのか?」
「かなり高い確率で巻き込まれるでしょうね。
 英霊召喚なんて非常識を成し遂げるほどの奇蹟、それだけの力を持った聖遺物を欲しない魔術師なんて、まずいないわ。
 彼らにとって聖杯とは、どんな犠牲も厭わず欲する程に価値のあるモノなのよ。
 サーヴァントの糧となるのは第二、第三要素……つまり精神と魂ね。
 効率の良くそれらを集める方法は碌に抵抗も出来ない一般人を襲うこと。
 魔力に自信のないマスターがそういう手段に訴えても不思議じゃ―――」
「ふざけんなっ!!」

 抑えきれない激情に身を任せ、吼える。

 無関係な人達を襲ってまで欲する奇蹟?

 冗談じゃない。

 そいつらの願いがどれほど崇高であろうと、認められるわけがない。

「聖杯戦争なんて馬鹿げた殺し合いをするなら自分達だけでやればいい。
 無関係な人間をそんなことに巻き込むんじゃねえっ!」
「怒鳴り散らしたところで状況は変わらなくてよ」

 キャスターの声に、少し冷静さが戻ってくる。

「……悪い、急に怒鳴ったりして」
「ええ、まったく。それで、坊やの答えは決まったのかしら?」

 平穏に暮らしている人たちがいて、その大切な時間を害そうとする輩がいる。

 正義の味方が戦う理由なんて、これだけで十分だ。

「決まったさ、今のでな。
 俺は聖杯戦争に参加する。
 正直言って聖杯なんてどうだっていい、だけどその過程で犠牲になる人がいるっていうなら話は別だ。
 そんな理不尽から彼らを護るために、俺は戦おう」

 流されてでも、巻き込まれてでもない。

 明確な意思を持ってこの戦いに俺は臨む。

「そう、それじゃあ契約完了ね」
「ああ」

 右手を差し出す。

 初めはキョトンとそれを見ていたキャスターだったが、俺の意図に気付いたらしく、 右手をゆっくりと伸ばして握手する。

「不甲斐無いマスターだけどよろしくな、キャスター」
「改めて誓いをここに。
 これより我が杖は貴方と共に、貴方の運命は私と共に。
 私の方こそよろしくお願いします、マスター」

 その柔らかい手の感触に、俺と彼女の契約が真の意味で完了したのだと実感した。 

「そういや自己紹介がまだだったな。
 俺は士郎。衛宮 士郎だ」

 何故こんな大事なことを忘れていたのか。

 俺は微かに自嘲の含んだ苦笑と共に自身の名を名乗った。

「ねえ。士郎は本当にそれでいいの?」

 唐突に隣から冷たい声が響く。

 首を捻れば、美由ねえが感情の読めない眼でじっと俺を見据えていた。

 何が、などと問うのは論外だ。

 たった今、それを誓ったばかりなのだから。

 だから俺は彼女の眼をしっかりと見返し、無言で頷いた。
 
「そっか、もう決めちゃったんだね」

 はぁ、と美由ねえは溜息を吐いて表情を緩める。

 彼女はどこか諦めたような、親父の最期を彷彿させる笑みを浮かべて言葉を続けた。

「無茶をするなって言っても、士郎には無理なんだよね。
 だったら士郎は自分の想いに正直に戦って。
 どんな危険な状況に晒されても、私が家族として義姉あね として、そして御神として貴方を護ってあげるから」

 キャスターと繋いだままの手に、美由ねえの掌が重なる。

 どれだけの時間そうしていたのか、やがて三つの手が離れる。

「言っておくけど、私はまだ貴女を完全に信用したわけじゃない。
 もし士郎を裏切るような真似をしたら…………」

 手を引っ込めながら美由ねえはそこで言葉を止めると、キャスターに向けて脅しではない本物の殺気を放つ。

「ちょっ、美由ね―――」
「士郎は黙ってて。私は彼女に聞いてるの」

 嗜めようとした俺の言葉を一刀両断に切り捨てた美由ねえに、キャスターはこれまでにないほど真剣な口調で問い返した。

「答える前に一つだけ、私のことを絶対に裏切らないと約束してちょうだい。
 それさえ約束してくれるなら、私から貴女達を裏切る理由はないわ」

 その約束が何を意味するのかなんて分からない。

 ただそれが彼女にとって余程大事なことだというのは、硬い彼女の表情に時折混ざる不安や期待といった様々な感情から容易に読み取れる。

 美由ねえもそれに気付いているのか、言葉を選ぶように話し出した。

「絶対になんて軽々しく約束できるほど、私は無責任じゃないつもり。
 だから貴女が士郎の味方でいる間だけは、私から貴女を裏切ることはないと約束するよ」
「十分よ。安易に肯定されるより余程信じられるわ。
 士郎の答えはどうかしら?」
「キャスターが誰かを巻き込んだりしないなら、俺に裏切る気はないよ」
「誰かを巻き込むっていうのがどの程度の規模かにもよるわね。
 せめて少量の魔力搾取くらいは認めてもらわないと、私達は生き残れないわよ」
「魔力搾取って……。大丈夫なのか、それ?」
「量を抑えておけばたいした実害はないわ。
 あったとしても、精々朝起きた時に気だるく感じる程度のものよ」

 その程度なら……まぁ、いいか。

「本当にそれ以上のことは、ないんだな?」
「ええ」
「なら、俺はキャスターを信じる。裏切らないと、約束する。
 だけど、俺が知らず知らずのうちに裏切ってる可能性はあるかもしれない。
 その時は言ってくれ。そしたら改善できるところは頑張って直す。
 もっとも、俺がキャスターに見限られる確率の方が高そうだけどな」

 それはないわよと俺の最後の言葉をあっさりと否定したキャスターは、俺と美由ねえに視線を何度か往復させる。

「そう……二人とも私を信じるって言うのね。
 けれど私の真名を知って尚、貴女達は同じように約束できるかしら?」
「真名?」
「真名というのは、英霊として記録された正式な名前のことよ。
 キャスターなんて呼称は所詮は真名を隠すための、ただのクラス名に過ぎないわ」

 キャスターはそこで一旦言葉を区切ると、申し訳無さそうに俺に向き直った。

「ごめんなさいね、今更で。
 本来なら契約する際に教えておくべきことなのに……」
「気にするなよ。キャスターにはキャスターなりの事情があったんだろ?」
「事情というよりも私情ね。
 士郎があまりに愚直だから、私の真名を告げることに抵抗を感じてしまったのよ。
 私は正規の英霊などではなく、人々が望んだ必要悪の結晶、反英霊なんですもの。
 我が真名はメディア。コルキス王の娘といえば分かるかしら?」

 メディアと言う名には聞き覚えはあるのだが、生憎その名が何を示すかまでは俺には分からない。

 対応に困り戸惑っている俺の反応からそのことを読み取ったのか、キャスターは肩透かしを食らったような表情を浮かべ、次いで美由ねえの反応を窺った。

「へぇ……なるほどね」

 美由ねえはその意味が理解できたらしく、驚きつつも納得したように頷いていた。

 彼女の雰囲気も、先程に比べれ幾分和らいでいる気がする。

「過去に背負った咎をわざわざ明かしたのは、貴女なりの誠意のつもり?」
「そう受け取ってもらっても結構よ。
 もっとも、士郎には伝わらなかったようだけど」
「ぐっ、どうせ俺は無知だよ」

 この場でただ一人状況が理解できない俺は、そう言うことしか出来なかった。

 うぅ、二人の生暖かい視線が辛い。

「まあ、士郎は後で自分で調べなさい。
 私から説明して妙な先入観を抱かせるのも悪いし」
「賢明な判断ね」

 そうして俺を置き去りにしたまま二人の世界に戻っていく。

「だけど貴女は知っているのでしょう、この名の意味を。
 それでも私を信用できるの、貴女は?」
「できるよ。安心して、私の答えは変わらないから」
「どうして……?」
「貴女が私達とちゃんと向き合ってくれたから、かな。
 貴女ほどの魔術師なら対魔力のない私達に暗示を掛けるくらい造作も無いはずなのに、貴女はそうはしなかった」
「それは買い被りよ。 ただ貴女達に魔術を使う必要を感じなかっただけ。
 だって士郎ほど感情が読みやすい人間はなかなかいないもの」
「まあね、それが士郎らしいといえば士郎らしいんだけどさ」

 馬鹿にされてる気がしないでもなかったが、二人が楽しそうにしているので口を挟むのも無粋に思えて黙っていることにした。

「それにしても貴女、士郎の魔術を見ただけっていう割には随分と詳しいのね。
 対魔力なんて見ただけでは分からないでしょうに」

 キャスターの言葉に美由ねえは「あっちゃ〜」とばかりに顔を顰める。

「あはは〜、……てい」

 誤魔化すように笑っていたかと思うと、不意打ちのように美由ねえの右腕が動いた。

 その動きを知覚できたのはまさしく偶然。

 咄嗟に回避しようとしたが、真面目な話だからと正座していたのが災いした。

 身体を前に沈めるも数瞬遅く、鈍い衝撃が脳を揺さぶる。

「ぐはっ……なん……でさ……」

 成す術などあるはずもなく、俺の意識はあっさりと刈り取られた。




Interlude3−1




 倒れ込む士郎の身体を美由ねえと呼ばれた女性が優しく抱きとめる。

「貴女、いきなり何を……」
「軽い脳震盪を起こして気絶させただけ。五分もすれば気付くはずだよ。
 ごめんね。これから話すことは、士郎にはまだ知られたくないんだ」

 私の戸惑いに気付いた彼女はそう答え、士郎の頭を膝に乗せる。

「士郎に知られては困るようなことを、私に話してしまってもいいのかしら?」
「貴女が誠意を示してくれたんだから、私はそれに応えなきゃいけないって思っただけ」

 それはつまり、ひとまずの信用は得られたと考えていいのかしらね。

 もっとも目の前にいる女性は謎が多すぎて言葉の真偽は定かではないのだけど。

「私が魔術の存在を知ったのは八年前。
 それを教えてくれたのは士郎のお父さんにあたる切嗣さん」
「士郎の父親?」
「正確には養父らしいんだけど。
 十年前にこの町で大規模な火災が起こって、それに巻き込まれて身寄りを失った士郎を切嗣さんが引き取ったんだって」
「伝聞で話すということは、貴女はその当時衛宮の家にいなかったってこと?」
「流石は魔術師の英霊というべきか、察しがいいね。
 信用できるまで隠しておくつもりだったけどもうその必要はないみたいだし、遅ればせながら自己紹介をしておくよ。
 私の名前は高町 美由希。八年前から衛宮家に居候させてもらってる人間だよ」

 成る程、姉弟にしてはあまり似ていないと思ったらそういうこと。

 養子と居候、ならば顔立ちも髪の色も異なってるのも頷ける。

 けれど、居候だとすると解せない点があることも確か。

「魔術回路を持たない私に切嗣さんがわざわざ教えてくれた理由は簡単。
 私の仕事上、たまに魔術師を相手にしなきゃいけないこともあったから。
 それが、私が士郎に隠しておきたかったこと」

 美由希は私の疑問を読んだように先回りして自分が魔術師ではないことを示しつつ、魔術師との戦闘経験があることを明かす。

「魔術師と戦う羽目になるような仕事って一体なんなのよ?」
「昔は傭兵とかをやってたんだけど、最近はSPの仕事がメインかな。
 このことは士郎も知ってるんだけど、本題はこの先ね。
 実際に魔術師と戦う機会なんてそうある訳もなくて、傭兵時代に三回だけ戦った程度。
 ……死徒とか死者なら結構うじゃうじゃ殺ったんだけど。
 切嗣さんから念のためにって渡されてた御守りがあんなに役に立つとは思わなかったよ」
「御守り?」
「うん。私を対象にした暗示や結界みたな精神攻撃を知らせて、余程強力なものでない限り防いでくれるって言ってた。
 今も持ってるから、もしキャスターが魔術を使ったら、その瞬間に斬り捨てるつもりだったんだけどね」

 随分と物騒なことをのたまう彼女は表情こそ笑顔であるものの、その眼は本気だった。

 サーヴァント相手に物理攻撃が効かないとはいえ、魔術師相手に三度も生き延びた彼女なら何らかの対抗手段を持っていてもおかしくはない。

「私相手にそんなことが出来ると、本当にそう思っているの?」
「……なら、試してみる?」

 確証を得るための挑発のつもりが彼女の闘争本能を刺激してしまったらしく、やけに自信満々な笑みで彼女はそんな提案をしてきた。

「いいわよ、やってごらんなさい」

 今この状況での魔力消費は極力避けるべきだろうが、サーヴァントと人間との差を理解させるには返り討ちにするのが一番手っ取り早い。

 それに、こちらから挑発した以上、後に引くことは私の英霊としてのプライドが許さなかった。

 呪文を詠唱しようと口を動かした次の瞬間――――――


 ――――――何時動いたのかも何をされたかも知覚出来ないまま、気付いた時には私の首が絞めつけられていた。


 一小節で完成する神言を使う隙すらない早業。

 視線を落とせば、首に巻きついている細いナニカ。

 これは……糸?

 必死に霊体化して脱出しようと試みるが、糸から発せられる微かな魔力に似た『何か』に妨げられ抜け出すことが出来ない。

「か、あ……ぁ……」

 擦れた自分の声がどこか遠いものに感じられる。

 視界は霞み、今にも消えかねない意識を私は無我夢中で繋ぎとめていた。

 編み掛けの魔術の構成は、維持する余裕を失いとっくに霧散している。

「チェックメイト。まだ続ける?」

 返事を出来るように糸を緩めたのか、首に掛かっていた圧力が消える。

「っはぁ、はぁ…………降参、私の完敗よ」

 糸が首に絡まっている状態で碌に抵抗できるはずもない。

 呼吸を整えながら、敗北を認めざるをえなかった。

 落ち着き、冷静さが徐々に戻ってきた私はあらためて糸を観察する。

 構成から読み取った情報では概念は何も付加されていないようだけど……。

「まさか魔術を唱える間もなく負けるなんてね」

 たとえ美由希がサーヴァントに通用する攻撃を持っていたとしても勝算はあった。

 彼女の御守りとやらは彼女以外を対象とした魔術には効力を発揮しない。

 それは聖杯戦争の説明前に遮音結界と人払いの結界を張った際に何の反応も示さなかったことから明らか。

 ならば神言詠唱により防御結界を張った後、数発囲むように魔弾を撃ち出せば座っている彼女に回避しようがないだろうと踏んでいたのだけれど。

 よもや詠唱に入るよりも速く勝負を決められるとは流石に思わなかったわね。

「そんなに驚くかなくてもいいじゃない。当然の結果だよ。
 魔術師を接近戦で圧倒できないようじゃ御神の剣士の名折れだからね」
「御神の剣士?」
「御神っていうのは私の修めてる剣術の流派。
 小太刀二刀を主軸に、今見せてる鋼糸みたいな暗器も補助として扱ってる。
 本来鋼糸は相手の動きを拘束する為の武器なんだけど、手馴れてくればこんな風に相手の首に絡めて声を封じることも出来るようになるんだよ」

 いまだ首に絡まったままの糸に力が篭められようとしているのを感じ、慌てて静止する。

 魔術師にとって詠唱を封じられることはまさしく致命的、反撃することすら叶わない。

 無詠唱で使える魔術も無くは無いが、そんなことをすれば彼女は本気で私を殺すだろう。

 そしてそれに抵抗する術を、今の私は持っていない。

「ちょっ、ま、待ちなさい」

 焦りを含んだ私の声を無視し、美由希は淡々と告げる。

「これは警告だと思っておいて」
「警告?」
「士郎を裏切った時、私が確実に貴女を殺せるっていう警告。
 こうやって念を入れておけば、滅多なことはしないだろうし」

 ひゅん、と風を切る音と共に糸が外される。

「貴女を信用してないわけじゃないんだよ。
 でも士郎、あんな性格だし……」
「まあ、確かに不安に思うのも無理ないわね」

 二人揃って士郎の寝顔を眺め、溜息を吐く。

 衛宮 士郎。

 愚直なまでに真っ直ぐな私の二人目のマスター。

 全てを救う正義の味方になりたいと言った、等価交換の原則すら理解していないような三流魔術師。

 少年は気付いているだろうか、その理想はどうしようもない矛盾を孕んでいるということに。

 全てを救うことなんて不可能だ。

 必ずどこかに斬り捨てるべき『悪』は存在する。

 そう、私のように。

 『悪』であることを望まれたから、その運命を受け入れて狡猾な魔女として生きた私。

 セイギノミカタにとって、これほど判り易い悪はいまい。

 けれど、彼は私を斬り捨てられない。『悪』を斬り捨てることが出来ない。

 全てを救う彼の理想とはそういうことだ。

 私とは真逆な、けれど同等に歪んだその在り方。

 そんな士郎の歪さが気に入った。

 その理想がある限り、彼は決して自分からは裏切らない。

 そんな士郎だったからこそ、私は彼をマスターとして認めた。

 魔力の供給が不十分であろうと戦術の幅が限定されようと、彼の戦いを最期まで見届けたいと、そう思った。

 だから、美由希の警告は余計な御世話。

 魔術で傀儡にしようとか、いざとなったら士郎を見捨てようなんて思いは、彼の在り方を感じた瞬間に消え失せていた。

 もっとも、士郎がそれを語らなかったらと思うとぞっとする。

 下手に魔術を使った結果、参加者でもない人間に首を飛ばされて消滅したなんて我が身だけに笑い話にもならない。

 ……士郎には感謝しないといけないわね。

 美由希がともすれば不信を煽りかねない行動を起こした理由は、ただ純粋な士郎を想う心。

「士郎のこと、本当に大切にしているのね」

 その想いが理解できたから、気にしていないと示すように私は穏やかな声でそう言った。

「とーぜんだよ、家族なんだから」

 先程までの雰囲気を払拭するように、明るい声で美由希が答える。

 はっきりとそう言いきれる彼女を羨ましく、妬ましいと感じた。

 私にとって家族との想い出は傷痕であり、背負い続けなければならない咎だから。

 一瞬浮かんだ内心の昏い感情を押し殺し、私が強引に話題を逸らそうと口を開いたとき、士郎の身体がぴくりと跳ねた。

「やばっ、そろそろ士郎が意識を取り戻しそう。
 キャスター、これ以上何か聞きたいことある?あるなら急いで言って」

 とりあえず当初の疑問、彼女の魔術の知識の出所は分かった。

 まだまだ聞き足りないが、それは後々問い詰めればいいだろう。

「こんな状況ではお互い腰を据えて話せるわけがないでしょう。
 続きは今晩にでも機会を設けてもらうっていうのはどうかしら?」
「助かるよ、それじゃあ続きは今晩、士郎が眠ってからってことでいい?」
「分かったわ……ああ、最後に一つだけ聞かせてちょうだい。
 士郎もまた、御神の剣士なのかしら?」

 美由希はしばらく悩み、やがて苦笑と共に言葉を返す。

「頭に半人前の、って付くけどね。
 気になるなら後で試してみれば?」
「いいのかしら。半人前では怪我をするのではなくて?」
「ふふ、やってみれば分かるよ」
「そう。なら楽しみにさせてもらうわよ」

 その言葉を最後に互いに無言となり、静かに士郎の覚醒を待った。





Interlude out




「……ぅ、ん……」

 意識を取り戻した俺が最初に感じたのは布越しの弾力。

 うっすらと眼を開けば、美由ねえが俺の顔を覗き込んでいた。

 美由ねえの姿勢と俺の体勢から考えるに…………膝枕?

 それに思い至った瞬間、俺は勢いよく跳ね起きた。

 互いの顔が衝突しかけるが、美由ねえは俺の反応を予想していたように小さく首を反らせるだけで回避する。

「っと、あっぶないなぁ」
「誰のせいだ、誰の!!」

 赤くなった顔を隠すように八つ当たり気味に叫ぶ。

 この歳になって義姉に膝枕されるというのはいくらなんでも恥ずかしすぎる。

 それも、キャスターのいる前で。

 キャスターに目を向ければ、案の定というかなんというか、微笑ましいものを見たとばかりに穏やかな表情を浮かべている。

「ちゃんと説明してくれるんだろうな!?」

 あえてその表情を直視しないように、美由ねえに詰め寄る。

「あはは〜」
「言っとくけど笑って誤魔化そうとして無駄だからな。
 どうしても話したくないってんなら素直にそう言ってくれ」
「じゃ話したくない」
「……そっか、分かったよ」

 これ以上の追及は意味がないと判断して大人しく引き下がり、多少強引に話題を変える。

「美由ねえが何を話していたかはこの際どうでも……よくはないがそれは置いといて、真面目な話に戻そう。
 俺たちはこれからどう戦っていくんだ?
 敵に関する情報も無ければ、俺たちの今後の方針すら決まってないだろ」
「そうね……キャスター、貴女の考えは?」
「まずは敵の情報だけど……ごめんなさい、全く知らないわ。
 これからの相手の出方を見るしかないわね」
「要するに行き当たりばったりってことか」
「そういうこと。
 ま、私の魔力さえ回復すれば街に網を張れるでしょうから、それまでの辛抱よ。
 次に私たちの方針だけど、まずは拠点を決めましょう。
 戦略的観点からすれば、ここに張るのが理想なんだけど……」
「なんでさ?拠点なんて別に俺の家でいいだろ」
「知らないみたいだから教えておくけれど、ここは落ちた霊脈と呼ばれる土地なのよ。
 だから街に網を張って魔力を集めるのも容易いし、加えて言えばここには自然霊以外を排除しようとする結界が張ってあるからサーヴァントに対する守りも固めやすい。
 これほど好条件が整っている場所なんて、そうは無いでしょう?」
「……すまん、どれもこれも初耳だ。
 霊脈ってことは霊的に優れた土地だってのはなんとなく想像できるけど、そんな結界が張ってあるならどうしてキャスターは無事なんだ?」

 自然霊以外を排除するという条件に当て嵌めれば、当然英霊であるキャスターもその影響を受けるはずである。

 しかし、目の前にいる彼女は別段その結界の存在を苦にしているようには感じられない。

「あくまで結界は外来者を拒むためだけのもの、寺院の中にさえ入ってしまえば害を受けることは無いわ。
 だからこそ私は拠点にするにはこの場所が最適だと言っているのよ」
「……キャスターの主張は理解できるし納得もできた。
 だけど俺はここを拠点にする気は無い。
 もしここに拠点を張ったら、いざ戦闘になった時に寺の人たちを巻き込んじまう。
 そういうのは、嫌なんだ」

 キャスターの言葉は戦争を勝ち抜くという意味では正しいが、誰かを危険に晒す可能性のある提案を受け入れるわけにはいかない。

「はぁ、予想していたとはいえ……。
 分かったわよ。もう貴方の家でいいわ」

 呆れた、と疲れたように頭を振るキャスターと、そんな彼女に同情的な視線を向ける美由ねえ。

 俺が悪いのか、などと少しだけ思ってしまうが、前言を撤回する気は無い。

「それじゃ今から俺の家に案内するよ。
 話の続きは帰ってからってことでいいよな」
「ええ、それで構わないわ」
「なら早速……」
「ちょっと待って」

 帰ろうかと腰を浮かした途中に美由ねえの制止の声が掛けられ、中途半端な姿勢のまま固まる。

「なんだよ、美由ねえ」
「いや、帰るのはいいんだけど……この布団、どうする気?」
「あ……」

 美由ねえが指差したのはキャスターを寝かせ、彼女と肌を重ねた布団。

 当然汗やら何やらが染み付いているわけで……。

「どうしよう?」
「洗うしかないんじゃない?」
「だよなぁ。とはいえ流石にこんな時間から洗濯機を借りるわけにもいかないし……。
 仕方ない、家で洗って後で返すか」
「そうだね」
「じゃあ俺が布団を持つから、美由ねえは俺の分の荷物を頼めるか?」
「はいはい。私のもまだ多分林の中だと思うからちょっと探さなきゃなんないけど。
 時間が掛かるかもしれないし、士郎はキャスターを案内してあげて」
「ああ、分かった。それじゃ先に帰らせてもらうよ」

 手伝うと言ったところで美由ねえは拒むと長年の付き合いで理解しているため、頷いて立ち上がり、救急箱を片付けて隅に寄せ、畳んだ布団を抱えてキャスターを促す。

 外に眼を向ければ、あれだけ激しかった雨は既に止んでいた。

 靴を履き、キャスターと共に濡れた石段を一段一段のんびりと下る。

 階段を下りきった俺は振り返ってしばらくの間柳洞寺を見上げ、それから無言で踵を返して夜の町に向けて歩き出した。






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 感嘆符を打つタイミングが今ひとつ分からない。
 とりあえず柳洞寺からは離れることになりました。
 前回からある程度の加筆しただけですが、一旦これで区切り3−2へと進めたいと思います。
 あとちなみに過去編を書き始めています。
 こちらも出来次第アップしたいと思います。
 修正点に気付いた方、場面描写に不足を感じた方、その他普通の感想でも心待ちにしております。ではでは